ふきのとうやタラの芽、ゼンマイ、コゴミなどは自生する食用植物の中でも上位に位置する「山菜」と呼ばれています。
それに対して食べられるがスーパーに売っていない植物、ヨモギ、ノビル、タンポポ、ドクダミなどの「野草」と一括りにされる食用植物のジャンルもあります。
僕はその『野草』に焦点を当てて積極的に調理を行なっているのですが、まもなくやってくる野草のシーズンが待ち遠しくてソワソワしています。。
なので今回のブログは本格シーズンに入る前の下見、つまりロケハンのレポです。
石川県の3月中旬は春の入り口、特に今年は季節の進み方が緩やかです。
どこまで野草が出てきているか調べるため、調査に出かけてきました。
<目次>
1_野草の生える場所
今回の取材場所は石川県小松市の平野部と山間部の境目。
昨年の2月にはふきのとうを採取した場所です。
今回は田んぼと田んぼの間の用水路の土手や淵、川べりなどが調査スポット。
雪の下敷きになっていた枯れ草の間をぬって野草たちの新芽が生えてきます。
この時期は野草たちの背丈が低いのでいろんな種類の野草を見つけやすくどこに何が生えているかの把握がしやすいのです。
2_毒草 水仙<スイセン>
現場について一番最初に目についたのがこのスイセン。
多くの方が小学生の時の育てたことがある方も多いのでは無いでしょうか?
これは有名な毒草でもあります。
野草を採って食べてみてたい、と思っている方は必ず覚えておいていただきたい。
スイセンは観賞用の植物として民家の庭や小学生の理科の授業で育てたりと野草業界外の方にも馴染みのある植物だと思います。
しかしこいつはなかなかの毒性を持っています。
推薦の葉の形状から、野草ビギナーに野菜のニラと間違われることが稀にありるそうで日本でも食中毒事故の報告があります。
厚生労働省の「自然毒のリスクプロファイル」によると、スイセンは全草が有毒だが、特に球根に毒成分が多く、致死量は10グラム。海外では死亡例も報告されている。食べて30分以内で吐き気や下痢、発汗、頭痛などを起こすと言われています。
一般にスイセンの属するヒガンバナ科植物にはヒガンバナアルカロイドが含まれており、それらが有毒成分となります。
Narcissus 属には有毒成分はリコリン (lycorine ) 、ガランタミン( galanthamin )、タゼチン( tazettine )とシュウ酸カルシウム ( calcium oxalate ) などがあります。
スイセンは全草が有毒ですが、球根や鱗茎に特に毒成分が多くなっています。
食中毒症状だけでなく接触性皮膚炎症状を起こすこともあります。
不溶性のシュウ酸カルシウムを含んでいて,接触性皮膚炎を起こす。
葉が細いタイプのスイセンは、ニラに似ているため、花が咲いていないと間違える例が多いく毎年日本全国で2~7名のスイセンによる食中毒事故が報告されています。
鱗茎はタマネギやノビルの球根に似ていますが、葉を揉んだ後の匂ってみるとニラやネギ類のような独特の香りがなくスイセンはただ青臭いだけなので判断簡単に判断できます。
判断に自信がない場合は採取や摂取はやめましょう。
3_万能な野草の主役、蓬<よもぎ>
これは日本人なら誰でも知っている野草です。
一番有名なものだと草餅や団子に使われていて多くの方が食べたことがあると思います。
大きくなると背丈が30〜50cmくらいになります。
新芽はこんなに可愛いのです。
よもぎと聞くと『 和 』なイメージを持ちがちですがフレッシュのよもぎを香ってみると意外にもバジルに似た香りを感じさせてくれます。
僕の勉強している薬膳の視点から見ても薬効も優れていて体(経絡)を温めたり、生理を和らげたり、出血を抑えたり、女性にとって嬉しい効能が詰まっています。
細かい効能などについては後日別のブログでご紹介いたします。
よもぎのシーズンは4〜6月、穂先の新芽が柔らかくて食用に向いています。
夏に向かい虫が多くなるとアブラムシやその幼虫たちがよもぎの裏にぎっしりついてくるので早めに採っておくのがおすすめです。
<注意>
よもぎに似ている毒草で注意したいものがあります。
それはあの有名な「 トリカブト 」です。
僕も実際に自生しているトリカブトにはまだ遭遇していないのですが花が咲いていないトリカブトはよもぎにそっくりと言われています。
一番の分別のポイントは「トリカブトにはよもぎ独特の香りがない」という点です。
ただ「軍手をしてよもぎを摘んでいて軍手に染み付いたよもぎの香りに惑わされてトリカブトも採取していた」なんて事故が起きないように気をつけたいところです。
4_食欲誘う香り、野蒜<ノビル>
地面からヒョロヒョロっと生えているこいつがノビルです。
漢字では野蒜と書き、大蒜(にんにく)と同じ漢字を有しています。
このことからわかるようにニンニクの様な食欲を刺激してくれる香りが特徴的で小口切りにして料理に振りかけたり、ワケギやアサツキの様にヌタなどの和物やチヂミなどにしても美味です。
球根は極小サイズの玉ねぎの様な可愛いフォルムをしています。
球根はさっと茹でてマヨネーズや酢味噌をディップしても良し、天ぷらやフリットにしても良し、凝った人はキムチにしている方もいるそうです。
収穫時期はひょろっとした葉の部分は4~6月、10~12月と年に2回シーズンがあります。
コンクリートの割れ目や岩と岩の間などハードなところでも自生できるくらい逞しいので持って帰ってきて植木鉢に植えたところすくすく育ってくれているので「あ、ネギ買い忘れた!」って時に重宝します。
5_さっぱりとした酸味がクセになる、蓚<スイバ>
これは野草好きには定番の野草の一つです。
スイバという蓼(タデ)科の野草でちょっと酸っぱい味わいが特徴的です。
スイバはほうれん草や春菊に含まれる「シュウ酸」を多く持っておりこれを摂取し過ぎてしまうと尿管結石の原因になったりするそうです。
しかしシュウ酸は水溶性なので茹でて調理することでその成分を茹で汁の中に取り除くことができます。
なのでシュウ酸が溶け出した茹で汁は積極的かつ多量に摂取しない様にしましょう。
スイバを茹でる際はグツグツ長く茹でるのではなく短時間でサラッと仕上げましょう。時間にして1分以内がおすすめ。
長時間茹でると葉が溶けてしまうのです。
茹でたスイバは御浸しの様にして食べてもいいですし、茹で鶏と和えて食べてもGoodです。
収穫時期は3〜5月上旬がおすすめ。
暖かくなるにつれて虫食いがとても多くなります。
それほど虫にとってもクセになる味、ということですね。
6_凛とした香味が乙、芹<セリ>
これはもはや山菜や野菜と言ってもいいくらいの格式高い野草です。
新春の時期にはスーパーに並んでいることもありますね。
ミツバに似た凛とした独特の香りが特徴的です。
野生のものはスーパーで売られているものと比べると背丈が短く茎も細い気がします。
特に今の時期元育っていてもいい気がするのですが、、
大きいものは他の方に収穫されてしまったのかもしれませんね。
とは言えどヨモギやノビルと比べると探してもなかなか出会えないことが多く小さいものでも自生している場所を見つけると嬉しくなります。
セリは水辺に生えているため引っ張って収穫すると根っこごと取れてしまいます。
セリは根っこを土壌に残しておかないともう生えて来なくなっていますので収穫の際は根を残して積む様にしましょう。
川底が砂質や泥質の水辺に群生していることが多いです。
時期は2~4月が葉や茎が柔らかくておすすめです。夏に近づくと白い花を咲かせます。
また場所によっては毒草の「 ドクゼリ 」の近くに自生していることもあるので注意が必要です。
毒ゼリはセリとそっくりな花を咲かせます。
花が咲く前は葉の形状、葉の香りで見分けることができます。
7_野草を採る・食べる際の3つの注意
これは、、、
1、間違えて採取しない。
2、徹底的に洗う、または加熱する。
3、採取し過ぎない。
に尽きます。
まず間違えて採取してしまうと「うーん、美味しくなかった」だけでは済まないことが多いです。下手すると食後1時間以内に死亡してしまうかもしれません。
正しいものを採取してもそこに菌やヒルの卵などが生み付けられている可能性があります。
繰り返し激しく水道水で水洗いをすることでそれらのほとんど、97%を洗い流すことができるとのこと。それでも不安な場合は沸騰したお湯で茹でたり炒めたり加熱調理するといいでしょう。
そして最後に。
採取し過ぎないこと。
野草や山菜は自然からの贈り物です。
「やった!たくさん持って帰ろう!」と全部採ってしまうと他の人が採取できないだけでなく来年も再来年も野草が生えて来なくなってしまうことがあります。
思いやりと計画性を持って採取を心がけたいですね。
毒草と間違えると危険だ!
なんて怖いことを書きましたがキノコ業界と違って野草の毒草は見分けやすかったり、判別の方法がわかりやすいのでビギナーにも優しいです。
書店で「食べられる野草」系の図鑑やガイドブックを買って野山に繰り出すのはとても楽しいです。
今からシーズンインです。
マナーを守って楽しい野草ライフを一緒に送りましょう★