かぶらずし、それは北陸の伝統的な食べ物の一つです。
食べ物のジャンル的には
「あいよ!お待ちぃっ!」
と出してくれる握り鮨的な物ではなく発酵保存の技を用いた『なれずし』や『いずし』の一種です。
現代では普段の生活の中でなかなか食す機会は少なく作り方がわからない方も少なくないでしょう。
スローライフの大切さに気づき始めている方が多い昨今、塩麹や発酵食品が健康に与える好結果に注目が集まっています。
健康のためはもちろん今日まで続いてきた伝統的な食文化を守り今後に伝えて行ためにも、ここにブログとして残して行きたいと思います。
<目次>
■かぶらずしてどんな食べ物?
かぶらずしってどんな食べ物?
先ほども記載しましたが発酵保存の技を用いた『なれずし』や『いずし』の一種です。
「かぶらずし」は主に蕪と米麹と魚を使って作るのですが地域によって具材のバリエーションあります。
一番定番な物では魚にブリを使ったものが有名ですが富山県ではマスやシャケ、鯖を使ったものもあるそうです。
加賀藩料理人舟木安信の記録に「塩鰤の鮓」として、塩鰤、大根、かぶらを用いるという記述が見られることから、その原型は江戸時代中期に遡ることができるでしょうが発祥や起源は定かではありません。
ルーツ的には保存食的な意味合いが強かったのかもしれませんが次第にお祝いの品、贈答の品として年始の祝いのタイミングで良く登場したそうです。
昔はもちろん、現在でも蕪はともかく鰤は少々値が張るものであります。
そのためカブの代わりに大根、魚にはニシンを用いた大根鮨の方が食卓に馴染みがあるかもしれません。
スーパーでもお惣菜として少量で売られているものもありますがカントリーマアムのクッキー4枚分くらいの量で800円くらいします。
かぶらずしは非日常の食べ物、ちょっと特別な時に食べるちょっと良いもの、ということですね。
かぶらずしってどんな味?
僕がかぶらずしを初めて食べたのはおそらく小学生の頃でした。
正直当時は「変な味!まずい!」と思いました。笑
食べ慣れていない人は大人でも不味いと思う方はいるでしょう。
僕の勝手な偏見ですが日本酒やクセのあるチーズ、甘くないヨーグルトに良さを感じられる人はきっとかぶらずしを受け入れられるでしょう。
レシピにもよりますが、、口当たりは滑らか、塩味、甘味、とくに旨味を強く感じられる乙な味です。
かぶらずしの作り方
かぶらずしの作り方は簡単。
切る >> 漬ける >> 発酵 >> 漬ける >> 完成 です!
しかし自分の思い描く漬け込み具合にするには勘と経験が必要です。
失敗しても成功しても理想とは違えどほとんどの場合「美味しくなる」のでまずは作ってみましょう。
実はそれぞれの材料を買い物に行くタイミングがそれぞれ違います。
かぶらずしを作るには作り始めてから食べるまで2〜3週間の時間が必要です。
ちゃんと最後までから読んで計画的に買い物に行きましょう!
材料と選び方のポイント
<材料A>
蕪_4つほど(ソフトボールくらいの大きさのもの)
寒ブリ_500~800g きっていないサクのもの1〜2本程度
米麹_900gくらい
柔らかめに炊いたあたたかいごはん_2合分
塩_250g以上
お好みで…
<材料B>
柚子_1個 =皮のみ細切り
にんじん_1/2〜1本 =皮を剥き細切り、使う直前に塩揉みする。
鷹の爪や唐辛子_少々 =小口切り(輪切り)
かぶらずしを作るには作り始めてから食べるまで2〜3週間の時間が必要です。
なので食べたい日から2〜3週間前に作り始めるのがベストです。
初日:鰤を塩漬けにする
一番最初に仕込まなければいけないのは「ブリ」です。
まずは鰤を買いに行きます。
初日に買うのは「ブリだけ」です。
その他はまとめて2週間後に買うのがいいでしょう。
ぶりの選び方としては食べた時にあっさりとさせたければ天然物や背中の身の部分を選ぶといいでしょう。
僕は濃厚な味わいに仕上げたいので養殖物の腹身をいつも選んでいます。
好みに合わせて必要な部位を買いましょう。
まず、ブリを5〜7mm程度の厚みで切って行きます。
ポイントは均等に塩漬けするために均一な厚みに揃え切ることが大事です。
ちょっと味見を。。。
身の油の乗り方を味覚で確かめます。
と言いながらただ食べたいだけです。笑
全て切り終わったらタッパーで塩漬けにします。
タッパーの底から、
塩>>ブリ>>塩>>ブリ>>塩>>ブリ>>塩
と交互に重ね積んでいきます。
塩の量は一番上と底は多め、それ以外の中間層は写真のように少なすぎず多すぎない程度に薄らとまぶしていきましょう。
最後の塩の層で蓋をしたら、落とし蓋ならぬ「落としラップ」をしてひと回り小さいタッパーにナイロン袋に入れた水などを入れ重しにしてぶりの塩漬けタッパーに乗せます。
ここまできたら後は2週間漬け込みます。
時々ブリの様子を見てブリから出た水分が溜まっていたらその都度捨ててやります。
この工程をサボると生臭いかぶらずしになってしまいます。
10日目:蕪を塩漬けにする
ぶりの次は蕪です。
蕪を買うタイミングで他の材料も全て買っておくといいでしょう。
蕪は皮の下に口に残る嫌な繊維の筋が通っているので厚めに剥いていきます。
皮を剥き終わったらだるま落としの要領で横方向にスライスしていきます。
厚みは10~12mm、これも均一な厚みに切るといいでしょう。
切った蕪は2/3ほど切り込みを入れブリを挟みやすいようにしておきます。
全ての蕪に切り込みを入れたら塩漬けです。
塩の量はバットなどに塩を入れその上にポン、ポンを裏表に塩を纏わりつかせ軽くつく程度でOKです。
後は漬物を漬け機?を使い圧力をかけ3〜4日脱水&塩漬けしていきます。
しかし我が家は漬物つけ機が無いので大きめのタッパーに蕪を敷き詰めその上に落としラップをし、そのラップの上から水を入れたワインの瓶数本で押さえつけ代用しました。
要は重しが出来、脱水できればそれでいいのです。
13日目:こうじ(麹)を仕込む
この工程を行ったことのある方は少数なのではないでしょうか?
調理師学校を卒業し料理人をやっていた僕もかぶらずしを作るまでやったことはありませんでした。
初めてさんでもわかりやすいように解説しながら進めて行きたいと思います。
麹を仕込む際に一番気をつけなければいけないのは「温度」です。
炊飯器をお持ちの方は炊飯器を活用すると非常に簡単にできます。
まず最初にご飯を炊きます。
ご飯は食べたらねちゃ〜っとするくらい柔らかく炊きます。
炊けるのを待っている間に麹の塊をやさしくほぐしておきましょう。
ご飯が炊けたら米を混ぜほぐししばらく軽くだけ粗熱をとってやります。
熱すぎると麹の菌が死んでしまうからです。
ほくした麹を炊飯器の中に入れやさしく混ぜ込みます。
あとは炊飯器の保温の機能をつかって麹を発酵させます。
ここまでは初めてさんでも簡単にできると思います。
ここからが麹の難しさ、面白さが見えてきます。
時間は10時間以上。
麹がうまく発酵すると「甘っ!」と言いたくなるくらい甘くなります。また麹や米が「ぼてっ」「どろっ」っとします。
10時間経っても甘くならなかったり、米や麹がパサパサしていたら45~60くらいのお湯を180ml以内入れます。
発酵が進むと予想以上に水分が出てくるのでお湯の入れすぎは注意です。水分が足りてなくて心配。。な感じがちょうど良いかもしれません。
そこからさらに3時間ごとに麹の様子を見て育てます。
僕は炊飯器を持っていないので石油ストーブの上で湯煎を行ったり、おばあちゃんのこたつの中であたためたり、コンロで湯煎したりしました。
失敗しやすいのでこれだけのために炊飯器を買ってもいいな、と思えるほど大変でした。笑
「甘っ!」「ぼてっ」「どろっ」となったらこうじは完成です。
本漬けに入る前に常温以下になるまで熱をとっておきましょう。
14日目:本漬け開始
いよいよ本漬け開始です。
まず初めにカブにブリを挟み込んで行きます。
この時1枚のカブに1枚のぶりが綺麗に入ればいいのですが足りなければぶりをちょうどいい大きさに切って入れたりうまいことバランスを考えながら挟んで行きます。
ブリやカブが余ったらそれぞれ単品で漬け込んでもいいので避けておきます。
タッパーで漬け込んでいくのですが底から、
底>>麹>>かぶらずし>>材料B>>麹>>かぶらずし>>材料B>>麹>>かぶらずし>>材料B>>落としラップ蓋
となるように敷き重ねて行きます。
(僕はゆずやにんじんを入れない派なので入れません。入れる方は上記の順に入れて行ってください。)
この時空気が入らないように気をつけながら敷き詰めて行きましょう。
単品で余ったカブやブリは別のタッパーに同様に漬け込んでいくといいでしょう。
余り漬けしたブリはトースターや魚焼き機で焼いたり、カブはチーズ系のパスタやリゾットと相性抜群になります。
麹はそれだけで食べても体にものすごく良いスーパーフードです。
そのまま食べるのも良し、他のお肉や野菜を漬け込むのも良し、お好みで楽しんでください。
すべてつけ終わったら落としラップをしてタッパーにフタをし、冷暗所で4日〜1週間漬け込みます。
冷蔵庫に入れると麹の働きが鈍くなるので常温の方がお勧めです。
漬け込みが完了したら完成です。
完成後は麹の発酵が進まないように冷蔵庫で保管しましょう。
漬け込み完了後も麹は発酵し続け、最終的にはシュワっとした炭酸みたいなものが発生します。
こうなってくると食べられますが余り美味しくありません。
食べ物などを腐敗させる菌は麹菌に食われてしまうので腐敗することは少ないようです。
ただ密閉していなかったり外気が触れるような環境だと雑菌が入り込んでカビが発生したりしますのでできるだけ早めに食べてしまうのが良いと思います。
今年は思ったより水分が大きなってしまいましたが味、特にうまみが濃厚。
滑らかな舌触り、喉越しは絶品でした。
かぶらずしの裏技
かぶらずしはもちろんそのまま食べるのが目的な食べ物ですが料理の材料として使っても最高に美味しいです。
僕は「カブ」と「ぶり」に分けて調理します。
特に漬け込んだカブはチーズや味噌など発酵食品との相性が抜群です!本当に最高!
「え?すしをチーズやリゾットと。。?」
とアンチに思うかもしれませんが付けたカブは言ってみればただの塩麹野菜=発酵野菜、使い方は無限大です。
「たくさん作りすぎて食べれないや、、」「かぶらずし、、、飽きた、、」なんて時はアレンジして使いましょう!
*カブのアレンジ例
・チーズ系のリゾット
・チーズ系のパスタ
・味噌を軽く塗って焼く
・味噌汁の具
・チーズを挟んだおつまみ
*ぶりのアレンジ
・そのまま焼く
・ホイル焼き
・玉ねぎなどとカルパッチョ
などなどです。
いかがでしたか?
「え、時間かかってめんどくさそう」
と思われる方もいるかもしれませんがお子様や家族、そして自分自身に伝統の食文化を残す意味を込めて一度チャレンジしてみてはいかがでしょうか?
「時短料理」「ずぼらめし」とは真逆を行くスローな食を楽しみましょう。
かぶらずしをアレンジしてリゾットにするなんて考えつかなかったです!
今度真似してみたいと思いました☺️